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SAWARABI HAPPY FOOD PROJECT

CONCEPT ひとりひとりに、おいしい介護食を。

おいしいものを、おいしく味わう。そんな当たり前の幸せを、すべての人へ届けたい。これが、SAWARABI HAPPY FOOD PROJECTの原点です。栄養価の高さや食べやすさを追い求めるだけではなく、利用者さまの「食べたい」という気持ちに向き合い、ひとりひとりに合わせたおいしい介護食をつくります。その第一歩として、分子調理のメソッドを使っておいしさの再現性を高めたレシピを開発。完食率などのデータを取り込み、個人のコンディションや好みに合わせた介護食を提供するため、実証実験をはじめています。オープニングを飾るレシピは、本格的な味わいを追求した「にぎらな寿司」。にぎらなくとも、確実に寿司の味わいを堪能できる職人技が光ります。ひと口の介護食からはじまる、ひとりひとりの幸せ。「分子調理」と「データ」というふたつの隠し味で、介護食の明日を生みだしていきます。

分子調理メソッドに基づくレシピ「にぎらな寿司」

さわらびグループでは、噛む機能や飲み込む機能が低下した方など、それぞれの食べる能力に応じて食材の固さや形状を変えて、介護食を提供しています。日々、利用者さまと真摯に向き合っている中で、おいしさを追求する道筋をより明確にしていく手立てはないだろうかという疑問が起こり、このプロジェクトがはじまりました。そして、「分子調理」の考えに基づき、「おいしさの指標」を作ることを目標に、再現性の高いレシピを開発。食材の物性変化を計算し、正確な温度と時間を守って調理するという、おいしさに繋がる科学的な根拠をレシピに組み込みました。試作レシピの第一弾として、利用者さまにもっとも人気のある「お寿司」を、記念日用の介護食「にぎらな寿司」として開発しました。

「にぎらな寿司」の特徴

テクスチャー(Shape & Form)の画像

テクスチャー(Shape & Form)

ふんわりととろけるような食感の寿司ネタは、タンパク質の凝固時間を計算し、柔らかい食感を保ちつつ、安全に食べられる加熱の温度と調理時間を守っています。また、醤油はジュレにすることによって口の中でゆっくりと溶けるなど、口中内の温度による物性の変化をレシピに組み込みました。シャリは、ネバつきの原因であるでんぷんを酵素で分解。口溶け良くシャリを固めることができるので、喉にベタつかずなめらかな食感を味わえます。

香りの足し引きの画像

香りの足し引き

魚をミンチ状にすると、表面積が増え、魚の生臭さが出てしまいます。そのため、今回は魚の生臭さの原因であるトリメチルアミンを、白麹由来の有機酸で中和しました。また海苔は炙り、あえて香気成分を強調してからジュレにすることによって、食べた後の香りを口腔内に長い時間残します。ガリも火にかけてエステルを飛ばし、酢の香りよりも生姜の香りを強調するようにしました。

真空調理法の活用の画像

真空調理法の活用

真空状態で調理することで、栄養価を逃しにくく、均一な調理が可能になります。また、正確に温度と時間を管理するスチームコンベクションオーブンを活用することで、味の再現性が高くなります。

口中調味の画像

口中調味

寿司ネタやシャリを素材ごとに調理し、口の中でお寿司を再構築。これは、「白いご飯とおかずを一緒に食べ、口の中で味付けする」という、日本食ならではの特徴「口中調味」を活かしています。わさび、ガリ、海苔など香りのある素材は、口の中で味の広がり方に時間差を作ることで、深い味わいを実現します。料理を分解し、再構築するという口中調味の考え方は、通常の介護食にも応用できます。

分子調理メソッドで実現する再現性

分子調理の考えを組み入れて開発したレシピでは、調理プロセスにおいて温度と時間まで詳細に設定。そのため、ひとの調理技術に頼ることなく、介護現場の職員によって、「おいしい介護食」を安定して提供することができます。現在、分子調理メソッドにて開発したレシピが、実際の介護現場で再現できるか、実証実験もスタートしています。その結果、フードコンサルタント指導の元、現場の調理職員の手によって、「おいしい介護食」の再現に成功しました。

分子調理メソッド + 介護食としての食べやすさ

今回開発した「にぎらな寿司」では、利用者さまの食べられる食事度合いや食べやすさを加味してレシピのバリエーションを用意しています。また、利用者さまに試食していただき、「箸が持ちにくくなった方でも食べやすいよう、お皿にのせるのではなく、スプーンにのせた形で提供する」「生食材だけではなく、食材を加熱してレシピのバリエーションを増やす」など、みなさまのご意見をいただきながら、運用を見据えた改善を行っています。

画像認識技術を用いた完食率のデータ化

介護医療現場では日々の食事において、ひとりひとりに合わせて栄養とカロリーバランスを考えた食事を提供しており、完食していただくことが理想です。今回の実証実験では、人間が目視で判断する完食率を機械学習を用いた画像認識技術で代替えするシステムのプロトタイプを開発しました。スマートフォンで食前と食後の食器を撮影すると、完食率を5段階で判定。QRコードを読み込むことにより、入居者IDと関連づけて記録できる仕組みを試作しました。

食事と、完食率のデータを繋げる試み。
食事と、完食率のデータを繋げる試み。食事と、完食率のデータを繋げる試み。
  • 食前の撮影
    食前の撮影
  • 実食
    実食
  • 食後の撮影
    食後の撮影

未来の介護食を見据えた実証実験の実施

実証実験では、画像認識技術を用いて利用者さまの完食率を計測するプロトタイプを制作しました。今後、精度の高いデータを収集していくことで、利用者さまの体調の変化や嗜好の変化を可視化し、病気を未病の状態で防ぐなど、予防医療にも役立てることができるのではないかと考えています。これからも、ひとりひとりの利用者さまが本当に満足できる食事を追求し続け、おいしい食事を提供することはもちろん、普段の食事を予防医療の可能性へ繋ぐ未来を目指していきます。

「おいしい介護食」から予防医療の可能性へ繫ぐ。
「おいしい介護食」から予防医療の可能性へ繫ぐ。「おいしい介護食」から
予防医療の可能性へ繫ぐ。
  • レシピ開発・調理実習
    レシピ開発・調理実習
  • 試食会の実施
    試食会の実施
  • 完食率の画像認識
    完食率の画像認識

ひとりひとりがおいしいと感じる食事をとり、健やかな生活を送ることを目指す本プロジェクト。この先に、利用者さまの体調の変化を読み取ったり、病気の種を察知したり、“食”のデータが私たちに語りはじめる未来のKAIGOを想像しています。

MEMBERS

山本 左近 やまもと さこん

山本 左近 やまもと さこん

幼少期に見たF1日本GPでのセナの走りに心を奪われ、将来F1 パイロットになると誓う。両親に土下座して説得し1994年よりカートからレーシングキャリアをスタートさせる。2002年より単身渡欧。ドイツ、イギリス、スペインに拠点を構え、約10年間、世界中を転戦。2006年、当時日本人最年少 F1デビュー。2012年に日本に拠点を移し、医療法人/社会福祉法人の統括本部長として医療と福祉の向上に邁進する。2017年には未来ヴィジョン「NEXT55 Vision 超幸齢社会をデザインする。」を掲げた。また学校法人さわらび学園を取得し専門学校教育事業を通じて未来の福祉人材の育成をする。
日本語、英語、スペイン語を話すマルチリンガル。

『もしかしたら、これが最期の食事になるかもしれない。高齢者の方に、もっとおいしい食事を提供したい』。私には、常にそんな思いがありました。食事は、生きる喜びや幸せに繋がるもの。毎日おいしい食事を召し上がっていただき、幸福な時間を過ごしてほしい。その実現を目指して、このプロジェクトをはじめました。

多田 鐸介 ただ たくすけ

多田 鐸介 ただ たくすけ

クリニカルフードプロデューサー

1968年生まれ。18歳で渡仏し、「ル・コルドン・ブルー・パリ」で学んだ後、パリのミシュラン星つきのレストランで修行。「ル・コルドン・ブルー・東京」開校とともに帰国、講師に就任。その後、タイユバン・ロブション、パークハイアット東京などを経て、ドイツの厨房機器メーカーにてフードアドバイザーとして7年間勤務。その間、病院食、介護食のコンサルタントとなる。自らのフランス料理店経営を経て、アンチエイジングメニューの開発、病院食、介護食など、アンチエイジングを含む食の総合コンサルタントとして活動。病院や老人ホームの食のコンサルタントとして、高齢者の食べる喜びと健康に大きく貢献している。著書に『新・介護食レシピ』など。

お年寄りの方が多くなっている昨今。人間は高齢になると、食べたいものを食べられなくなってしまいがちです。特に、嚥下障害になってしまうと尚更です。たとえば、海老フライ、和牛ステーキ、そして今回の寿司。これらを介護食として、おいしく食べられるようにしたいと思います。

ADVISORS

石川 伸一 いしかわ しんいち

石川 伸一 いしかわ しんいち

分子調理学者・宮城大学 食産業学群 教授

1973年福島県生まれ。東北大学大学院農学研究科修了。日本学術振興会特別研究員、北里大学助手・講師、カナダ・ゲルフ大学客員研究員(日本学術振興会海外特別研究員)、宮城大学准教授などを経て、現職。博士(農学)。専門は分子食品学、分子調理学、分子栄養学。主な研究テーマは、鶏卵の機能性に関する研究。 著書に、『必ず来る! 大震災を生き抜くための食事学』(主婦の友社)、『料理と科学のおいしい出会い 分子調理が食の常識を変える』(化学同人)、『「もしも」に備える食災害時でも、いつもの食事を』(清流出版)など。
「分子料理・分子調理ラボ」https://www.molecular-cooking-lab.net
「分子調理研究会」副代表 https://www.molcookingsoc.org

おいしさを最も必要としている分野のひとつは、『介護食』だと思っています。おいしいと唾液が出て、誤嚥の可能性を低くします。よりおいしい料理、より新しい料理に「分子調理」のサイエンス&テクノロジーが活かせればと思います。

濟渡 久美 さいと くみ

濟渡 久美 さいと くみ

管理栄養士・東北生活文化大学短期大学部 生活文化学科 講師

専門は調理学、栄養教育。「嚥下困難者に適した食事の物性検討」「離乳食の物性検討」などの研究分野で活躍。

毎日繰り返される栄養補給の手段である「口から食べること」は、QOL(quality of life:生活の質)のより高い生活を送るために重要な要素です。「安全」で「おいしい」食事を「安心」して召し上がっていただくために取り組んでいます。

ラファエル・オーモン

Raphael Haumont
ラファエル・オーモン

パリ第11大学准教授 “Food for Future” 研究所所長

1978年生まれ。パリ第11大学准教授。物理化学者。素材の物性と構造の関係への関心から、研究領域を分子調理へと広げ、パリのミシュラン2つ星レストラン「Sur Mesure」のシェフ・総料理長であるティエリー・マルクス氏と連携して研究を行い、教育・出版を通し、その成果を科学と料理の双方向に還元している。著書に『現代フランス料理科学事典』(講談社)など。

このプロジェクトに参加でき、大変光栄です。分子調理のおかげで、高齢者の方たちが食べる喜びを再発見できたと思います。嚥下は、入居者さまや患者さまのコンディションにもよります。寿司の味は、おいしさの記憶を呼び起こさせるだけでなく、テクスチャーも食べる人を中心に設計されているのです。

TECHNOLOGY PARTNER

株式会社 dott

株式会社 dott

人間が目視で判断する完食率を機械学習を用いた画像認識技術で代替えするシステムのプロトタイプ開発を担当。
ただ単に、最先端である、機能するということではなく、必要な情報や楽しさ、機能をよりカンタンで使いやすい形で送り届けることを追求する企業。ビジネスプロトタイピングの作成を行うため、デザイン、プログラミング、プランニングなど、その領域は多岐に渡る。

http://thedott.io/

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